愛すべき「千葉」

先日ふと「死神の精度」という作品のことを思い出した。2005年に発売された伊坂幸太郎先生の作品。

 

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「死神の精度」に出会ったきっかけは覚えていないけど、この作品は私にとって衝撃的な作品だった。明確にこのシーンが、この台詞が衝撃的だった!というわけではないけど、読み終えたあとに感じた「悔しさ」と「幸せ」が衝撃的だった。読みながら見送りを願った命は「可」と判断されたし、最後に欲しかった「あともう少し」は描かれることなく読者に委ねられる。それが悔しかった。最後まで先生が考えた正解の言葉がほしかった。その先を自分で想像しなくてはいけない、読者の分だけストーリーがある。それが悔しかった。私は先生が選んだ「正解」を最後まで知りたかった。だから読み終わったあと「悔しい」と感じた。

それと同時に、「死神の精度」から始まったストーリーが「死神対老女」で終わったとき幸せも感じた。ミュージックを愛した死神・千葉が「死神の精度」でくだした「見送り」という答えが、正解だったのか不正解だったのかはわからない。それは物語の中で生きた一恵だけが知ること。見送られて幸せだったかもしれないし、可と判断されたほうが幸せだったかもしれない。そんな一恵の人生の一部を、長い月日が経った後に千葉が見つける。一度見送った命が生み出した作品に出会った千葉がどんなことを思ったのかはわからないが、そもそもこうして見送った命のその後に千葉が出会ったこと、その仕事を千葉が思い出したことに幸せを感じた。悔しさも感じる作品だったけど、最後の最後でこれもよかったなって。

 

活字を読むことが楽しいと改めて感じた作品だったなあ、っていうのを思い出して久しぶりに読み返し、あのときと同じことを思ったのでなんとなくブログに残してみた。活字ってほんと楽しい。最近漫画ばっかりだったから小説ももっと読まなきゃなあ。